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〈帰国子女体験記:鈴木萌さん〉その6:ミドルスクール編

カンザスでの生活が1年経過し日常生活にも慣れ、いよいよ今度は中学校(ミドルスクール)へ入学です。家の近所の中学校にはESLクラスがなかったので、スクールバスで30~40分のところにあるMission Valley Middle Schoolの7年生として入学しました。

ローズヒル小学校の頃はほとんど宿題がなかった(または私自身が理解できず、提出を免除されていた?)のですが、ミッションバリーでの学校生活は宿題、レポート、調べものとの戦いの日々でした。

クラス担任は一応いるもののホームルームは週1回と随時連絡事項があるときのみ、私物は廊下に並んでいるロッカーに入れて、科目ごとに生徒自身が移動(敷地が広くて移動が大変!)して授業を受けに行くスタイルで大学のような環境でした。

また、選択科目も詳細に分かれていて、例えば「音楽」だけでも2種類のクラスがありました。オーケストラクラス、合唱クラスなどです。アートや人文系も倫理、文化人類学、哲学などにわかれていました。生徒個人が学びたいものを生徒個人の責任で選択して学ぶというスタイルで、少し困惑もしました。

毎朝、スクールバス通学や早く着いた生徒はカフェテリアで教室が開く定時まで待機します。宿題を教えあったり写しあったり、放課後の約束をしたり、、、移動教室の間の時間は3分ほどしかなく、教室のドアはすぐにロックされてしまうので、朝とランチタイム以外は友達とゆっくり話す時間はほとんどなかったと記憶しています。

カフェテリアも広さはローズヒル小よりも大きく、メニューも豊富で、コーラやスプライト、7upなどの炭酸飲料や100パーセントジュース、スニッカーズなどのお菓子などもありました。 小学校のときとは全然違い、簡単な会話だけで1日が過ぎることはありません。

授業は、先生の言っていることがなんとなくわかるけど、わからない、わかろうとしない、「まあどうせあと数ヶ月で帰国だし」諦めながら毎日過ごしていたので、提出物も名前と選択問題だけをなんとなく埋めてレポートは白紙で出したり、適当でした。

そんなとき理科の授業で元素記号を1~20まで暗記して学年一位を決める大会Chemical Elements Competitionがありました。大会までの準備期間はおそらく1週間はあったはずですが、大会があることさえも理解していなかったので一つも答えられずあっけなく初戦敗退しました。授業で何をやっている、何が起こっているかも興味もなく、あえて興味を持たないように、学校での自分の存在はなるべく消して、他人事のように過ごしていたので悔しくもありません。

しかしある日、理科の先生(私の担任でもあるロビン・ウィリアムス似の先生。お名前は忘れてしまいました。)に校内放送で呼び出されました。

”Moyuru Komukai, please come to Mr. xxx’s office.”

校内放送も自分が呼ばれることがあるわけないと信じきっていたので、友達に「モユル、xxx先生に呼ばれてたよ」と言われるまで呼び出されていたことさえ気がつきませんでした。 先生のところに行くとひとこと、「モユル、来週Competionの敗者復活戦をやるから。モユルにもできるから。」のようなことを言われました。

たった一言だけだったけれど、なんとなくやる気がでてきて、その日から1週間 1~20までの元素記号を徹底的に覚えました。Hydrogen, Helium, Lithium, Beryllium, Boron, Carbon, Nitrogen, Oxygen,...Chlorine, Argon, Kalium, Calcium。家でもスクールバスの中でも”Number 13?” “Aluminum!”, “what about Nitrogen?” “Number 9”, “What is the abbreviation for Chlorine” “Cl”などと練習しました。結果はなんと敗者復活戦で優勝したのです!それ以降、覚えた元素記号のおかげで化学には苦手意識を持つことなく帰国後も中高、大学受験と役に立ちました。あのとき先生が呼び出してひとこと声をかけていてくれなかったら、、、想像すると怖いです。



写真先生からの呼び出しの放送以来、学校の授業も呼び出し放送も全部自分に関係あること、と意識するようになりました。できることを精一杯取り組んだ結果、評価も上がり、冬休みに入る前には成績優秀者AAA(トリプルA)スチューデントにも選ばれました。AAAはご褒美があり、女子生徒はダウンタウンのアクセサリーショップでシルバーリングを1つ選べるご褒美でした(写真)。

意識も授業態度も変わったし、このまま帰国するまでがんばるか!と迎えた冬休み明けの3学期、今度は思わぬことで校内放送で校長先生に呼び出されることになります。

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